フリーランスが医療費控除の適用で節税したいときのポイントを解説

フリーランスの方は、節税対策として「医療費控除」を利用するとよいと聞いたことがある方も多いのではないのでしょうか?しかし、この医療費控除の制度を利用する際は、その費用が医療費控除の対象かどうかを自分で判断する必要がありますが、セルフメディケーション税制という特例的な制度もあり、難しさを感じることもあるかと思います。実際に節税対策を徹底して医療費控除を適用しようとすると、どうしたらよいのかわからないところがいくつか見つかるのではないでしょうか?

今回は、医療費控除を適用したいときのポイントについて、徹底解説したいと思います。

医療費控除とは

医療費控除は、確定申告をすると適用することができる所得控除制度で、支払った医療費の一部を所得から控除することができます。本来は、医療費はひとりひとりが支払わなければならないものですが、医療費がたくさんかかる人は税金を払う力が弱いという個人的な事情を考慮してできたものです。

※参考・参照サイト:国税庁「No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)」

確定申告の流れについては、

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こちらをご覧ください。

医療費控除ができるもの

自分で支払っていない部分は医療費控除の適用がない

医療費控除は、その年の1月1日から12月31日までの間に、自分や家族(自己と生計を一にする配偶者やその他の親族)のために支払った医療費が一定金額を超えたときに、所得控除を受けることができるというものです。したがって、自分の医療費ではなくても自分が面倒をみている家族の医療費を支払った場合には、その医療費についても医療費控除を適用することができます。

「支払った金額」ですので、健康保険の適用で医療費の負担が少ない場合、医療保険に加入していて保険金がおりた場合、高額療養費の適用があって医療費の負担が少なくなった場合については、自分の負担ではない部分は医療費控除の対象にはなりません

健康診断、予防接種には医療費控除の適用がない

医療費控除の対象になるのは、治療目的で支払った金額です。医者に行って支払った診療費や治療費は医療費控除の対象となりますが、医者への謝礼、治療ではない美容整形、予防接種、健康診断代、入院時のパジャマ代などは医療費控除の対象にはなりません。

入院したときの差額ベッド代については、医者に必要だと指示されて個室または少人数部屋に入院した場合には医療費控除の対象になりますが、医者の指示ではなく希望して個室または少人数部屋に入院した場合には医療費控除の対象にはなりません。同じように入院中の食事代についても、治療の一環として病院で出される食事は医療費控除の対象となりますが、自分で買ったものや出前したものについては医療費控除の対象になりません。入院や通院のための交通費は、治療に必要なものと考えられているために、医療費控除の対象になります。医療機関の領収書だけではなく、交通費の領収書も保存しておくとよいですね。

薬については、医者の処方箋があるもの、病気や怪我の治療に必要なものについては医療費控除の対象になりますが、健康増進や予防のための薬は医療費控除の対象になりません

出産費用と医療費控除

出産は病気ではないと考えられているので、特別に異常がなければ保険の適用はありません。このことから医療費控除についても適用がない、と思われている方もいらっしゃいます。しかし、出産については、妊娠中の定期健診、出産費用のうち自分で負担した部分については医療費控除の対象となります。定期健診や出産費用の補助があって自分で支払っていない部分については、医療費控除の対象ではありません。また、妊娠中絶の費用も母体保護法によるものであれば、医療費控除の対象になります。

※参考・参照サイト:国税庁「No.1122 医療費控除の対象となる医療費」

医療費控除の計算方法

医療費控除ができる金額は、支払った医療費の合計額から保険金などで自分の負担とならなかった金額を引いて、そこから10万円(ただし、所得(総所得金額等)が200万円に満たない人は、その所得の金額に5%をかけた金額)を引いた金額となります。控除できる度額は200万円までとなります。

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セルフメディケーション税制

セルフメディケーション税制とは

セルフメディケーション税制は、平成29年1月1日以後に支払った特定一般用医薬品等購入費について適用することができる医療費控除の特例です。特定一般用医薬品等購入費とは、医療用医薬品から転用された決められた成分を含む医薬品を購入した費用です。そのような医薬品をOTC医薬品とも呼びます。OTC医薬品かどうか自分で薬の成分を調べるのは一般の人には難しいので、最近のドラッグストアなどの領収書にはセルフメディケーション税制が適用できる医薬品かどうかの表示があるものが多くなっています。

セルフメディケーション税制の適用を受けることのできる人

セルフメディケーション税制は誰でも利用することができるわけではなく、健康の保持増進と疾病の予防のために一定の取組を行っている人だけが利用できます。その取組には、適用を受けたい年に定期健診、特定健康検診、予防接種などいずれかを受けていることが該当します。

セルフメディケーション税制の計算方法

セルフメディケーション税制を利用する場合には通常の医療費控除を使うことができず、どちらかひとつの選択適用になります。より節税対策を徹底しようと思うのであれば、通常の医療費控除とセルフメディケーション税制による医療費控除の両方を計算して、金額の大きいほうで医療費控除を受けるとよいでしょう。

セルフメディケーション税制による医療費控除の計算方法は、実際に支払った金額から保険金などで自分の負担とならなかった金額を引き、そこから1万2000円を引いた金額となります。8万8000円が控除を受けることのできる最高限度額になります。

医療費控除を受けるための手続き

医療費控除については、領収書を保存して自分で計算しなければなりませんので手間がかかることもあり、適用することができても制度を利用しない方も多いのが現状です。しかし医療費がたくさんかかる人は、集計してみると控除額が大きい場合もありますので、ぜひ計算をしてみてください。医療費控除の明細書を作成することで、医療費の領収書を税務署に提出しなくても医療費控除を受けることができますよ。

※参考・参照サイト:国税庁「医療費控除が領収書の提出が不要となりました」

普段は医者に行かない人も、健康診断や予防接種を受けている方は、セルフメディケーション税制が創設されたことにより、自分で購入した薬代について医療費控除を受けることができる場合があります。

医療費控除の適用を受けるには、確定申告が必要です。フリーランスの方の中には、パートやアルバイトをしている方もいらっしゃるでしょう。フリーランス収入が低いため、パートやアルバイト先で年末調整をして確定申告をしていない方もいらっしゃるかもしれません。この場合、年末調整では医療費控除を利用することができませんので、自分で確定申告をする必要があります。

確定申告で税金の還付を受けることができる場合には、振込先についても忘れずに記入するようにしましょう。

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