「手に職をつけたい」「将来性のある業界で成長したい」と考え、プログラミングを学ぶ人が増えています。
プログラミングスクールでプログラミングスキルを習得すれば、すぐIT企業に就職したり、フリーランスとして活動したりできると思っている人は多いでしょう。
しかし、実際は現場で必要とされるレベルまで到達できず、望んでいた仕事につけない人や、仕事を全く得られない人もいます。
自社開発を行う大手企業に就職できるのは1割程度で、あとは下請けや客先常駐の企業が多いのです。[1]
また、実際にプログラミングスクール卒業生から「何社もエントリーしたけど就職できなかった」という声も多数聞きました。
本記事ではこれからIT業界に転職したいと考えている人向けに、プログラマーを目指す人の現状や、おすすめの職種を解説していきます。
プログラマーは人口が多くて競争が激しい
近年はコロナウイルスの影響もあり、「リモートワークで働きやすい」「独立してフリーランスとして稼げる」職業に注目が集まっています。
実際に株式会社学情が20代の転職希望者に意識調査した結果、IT業界を最も魅力的に感じていることが分かりました。[2]
そして、IT系の技術職のなかでも、特にプログラマーの人気が高まっています。
プログラマー業界の現状
未経験者からプログラマーになるために、プログラミングスクールに通う人も増えているのです。
プログラミングスクールの数は年々増加しており、2023年には1万1127教室に達すると予想されています。[3]
それだけプログラマーを目指す人口が多くなり、競争が激しくなっていくと言えるでしょう。
経済産業省が公表した「IT人材需給に関する調査」によると、2030年には約45万人のIT人材が不足すると予想されています。[4]
つまりプログラマーの需要も年々高くなっていくのです。
ということは、転職も容易なように思えますが、実際は企業が求める「即戦力になる人材」とのギャップが存在しているのです。
プログラミングスクールに通っただけでは、実践的なスキルを手に入れることは難しいと言えます。
プログラミングの基本知識は習得できますが、現場で求められるレベルには及ばないのが現実です。
「求められるIT技術者」に必須のスキルとは?
また、IT技術者には「自走力」が重要とされます。
自走力とは、自ら目標を設定して実現しようとしたり、分からないことは自発的に調べて答えを見つけようとしたりできる力のことです。
スクールに通っている段階から、自走力の有無で習熟度も変わってきます。
自走力がある人は、しっかりと予習して事前知識を頭に入れ、不明点を明確にしたうえで講義に臨むでしょう。
また「自分はこんな技術者になりたい」と明確に理想像を思い描けているので、努力すべき方向が分かっているのです。
しかし、自走力のない人は講義の中だけですべてを学ぼうとし、漠然と分かった気になって終えてしまいます。
これでは、「スクールに通っているのに全くスキルが身につかない」と途中で挫折する可能性が高くなります。
仮に卒業できたとしても、プログラマーとして活躍していくのは厳しいでしょう。
確かに、完全な未経験者よりはスクール卒業生の方が教育コストを抑えられるため、採用される確率は高くなります。
しかし、求人にはプログラマー経験者も多く集うので、大手企業や制度の整った企業に就職するのは難しいのが現状です。
実務レベルのプログラミング習得は難易度が高い
スクールに通えばある程度のプログラミングスキルは身につきます。
しかし、実務で即戦力になるのは厳しいと言えます。
企業によってはプログラマーが作成したコードがそのまま製品化され、ユーザーに提供される場合も多くあります。
つまり、企業で採用されるプログラマーにはいきなり製品レベルのクオリティを求められるのです。
そのため入社後に半年以上現場で経験を積むことで、ようやくスタート地点に立てると言えるでしょう。
スクール卒業生でも、企業から求められるレベルについていけずに途中で退職してしまう人や、テスターばかりで次のステップに進めない人もいます。
もちろん大手企業の中には、採用後にしっかりと教育期間を設けて育ててくれるところもあります。
しかし、社員数が100名未満の中小企業などは、現場のスピード感が早く、即戦力になる人材を求めている場合が多いです。
したがって、スクールを卒業したばかりの人が活躍できる可能性は低いでしょう。
働くことを考えたらNonプログラミングのSEを目指すのがおすすめ
プログラマーよりもさらに人材が求められている職業があります。
それは「インフラエンジニア」です。
インフラエンジニアはIT基盤を支える重要な仕事
エンジニアといえば、システムやアプリの「開発」を行う仕事のイメージが強いでしょう。
しかし、インフラ系のエンジニアであればプログラミングは基本的に行いません。
Webサイトを例に挙げると、サイトを作成するために必要な「Webサーバー」を構築したり、Webページにアクセスするためのネットワーク環境を整備したりするのがインフラエンジニアの仕事です。
つまり、ITの基盤を支える重要な仕事を担当することになります。
ITインフラは5G、クラウド、IoT、セキュリティーなど続々と新しい技術が生み出され、進化を続けている領域です。
そのため、需要に対して圧倒的にインフラエンジニアが不足している状態なのです。
今後もますます需要は高まっていくことが予想されるので、狙い目の職種と言えるでしょう。
求人も経験不問・意欲重視で、未経験者を1から育てる研修制度を設けている企業が多くあります。
インフラエンジニアは高収入
年収の面でもインフラエンジニアがおすすめです。
プログラマーの平均年収は約430万円ですが、インフラエンジニアは約526万円。[5]
日本の平均年収は約441万円であることを考慮しても、比較的高収入といえるでしょう。[6]
また経験を積んで技術力を身に着けたり、資格を取得したりすることで大幅に年収アップが期待できます。
最後に:インフラエンジニアを目指して長く活躍していこう!
プログラマーは競争率が激しく、スクールで学んでスキルを習得しても、必ずしも望む仕事ができるとは限りません。
人材不足でありながらも多くの人が目指しているので、新人が飽和状態です。
したがって、プログラマーとして活躍するには、他者との差別化を図るための一層の努力が必要になるでしょう。
私の考えですが、これからIT業界に飛び込みたいと考えている人には「インフラエンジニア」を目指すことをおすすめします。
ITインフラの技術は進化を続けており、今後も仕事がなくなることはないと言えます。
また需要に対して人材不足のため、未経験者をしっかりと育てていく体制が整っている企業が多くあります。
将来性や年収の額を考慮しても、プログラマーよりインフラエンジニアの方が安定していると言えるでしょう。
実際に、私はインフラ系のエンジニアとして6年勤務していました。
完全に未経験で現場に入ってきた人も見てきましたが、やはり「自走力」がある人は大きく伸びていました。
・不明点はあらかじめ自分で調べ、自分なりの答えを出しておく。
・トラブルが発生した時は、他の人が対処しているのをただ眺めるのではなく、「どうやって解決したのか」をしっかり理解し整理しておく。
・先輩に頼りきりになるのではなく、自発的に動いて仕事を見つけていく。
一見当たり前のことのように思えますが、実践できている人は少ないのです。
またエンジニアはチームワークが非常に重要です。
コミュニケーション力がある人、相手の話を丁寧に聞いて自分の意見も発信できる人は成長していけます。
つまり、IT業界未経験であったとしても、その他のスキルで充分に補うことができる職業なのです。
これからIT業界で活躍したいと考えている人は、ぜひインフラエンジニアを目指して一生モノのスキルを身に着けましょう!
<参考・参照サイト>
[1] 「その現実は「甘くない」、問い合わせ1.5倍増のプログラミングスクール」(Business Insider Japan、2020.09.09公開)
[2] 「「テレワーク」の実施・推奨で、20代の転職希望業界に変化!「IT・通信・インターネット」業界への転職希望者の比率が3.7倍に|株式会社学情のプレスリリース」(PR TIMES、2020.04.16公開)
[3]「プログラミング教室、2018年は約4460教室で5年前の6倍に–GMOらが予測」(CNET Japan、2018.04.23公開)
[4] 「IT人材需給に関する調査(概要)」[PDF]( 経済産業省 情報技術利用促進課、平成31年4月、p.2)
[5] 「インフラエンジニアの仕事の平均年収は526万円!給料ナビで詳しく紹介」(求人ボックス、2020.09.28更新)
[6] 「平成30年分民間給与実態統計調査結果について」(国税庁、ハ 平均給与、令和元年9月)