「ITエンジニア」というと、「理系で数字に強い」「複雑な計算式を操れる」といったイメージがあるかもしれません。
でも、ITエンジニアにも様々な職種があり、実は文系出身者こそ活躍できるものも少なくないのです。
実際、NPO法人エンカレッジが就活生を対象に実施した調査[1]では、IT業界志望者の5割強が文系出身者であるという結果が出ています。
この記事では、文系にこそITエンジニアをおすすめできる理由を説明し、文系出身者が目指すべき職種をご紹介します。
ひとくちに「ITエンジニア」と言うけれど…?
ところで、一口に「ITエンジニア」と言っても、実際のところは様々な職種に分かれていることをご存じでしょうか?
たとえば、おなじ「企業向け社内システム開発」に携わるITエンジニアであっても、
・システムを設計する設計者
・設計書に沿ってコーディングを行うプログラマー
・サーバやネットワークの構築を担当するインフラエンジニア
・完成したシステムをテストするテストエンジニア
・プロジェクトを統括するプロジェクトマネージャー
・顧客にシステムの提案をするシステムコンサルタント
など、多様な職種があります。そして、それぞれに求められるスキルセットが異なります。
また、開発するシステム(ソフトウェア)の種類も様々です。
上述のような企業向けの業務システムのほか、自動車や家電製品に組み込まれる組込みシステム、工場やプラントなどの機械を制御する制御システム(FA)、衛星の軌道や天候などを予測したりするシミュレーションシステム、ゲームなど多彩なジャンルがあり、仕事に携わるエンジニアの適性も変わってきます。
なぜ文系出身者がITエンジニアに向いているのか?
「コンピュータ」や「システム」「IT」といった言葉を聞くと、ガチガチに理系のイメージを抱く人は少なくないでしょう。
実際、大学でコンピュータについて専門に学ぶ場合は、工学部などの理系学部に進む場合が多いといえます。
とはいえ、「だからIT職は理系向きなのだ」と結論付けてしまうのは早計に過ぎます。
前述のとおりITエンジニアが手掛ける仕事の内容は様々で、場合によっては理系よりもむしろ文系的な知識やスキルが役立つ場面が多々あるためです。
もちろん、特殊なシミュレーションシステムの開発などに携わる場合は、工学系の専門知識が求められることもあるでしょう。一方、一般的な企業向けの業務システムの開発現場では、数学や工学など理数系の高度な知識が求められる場面はあまり多くはありません。
また、システム開発の現場では要件定義書や仕様書といった様々なドキュメントを読み解く必要があり、このような作業に求められる文章読解力は文系のスキルの一つだと言えます。
その仕様書や設計書を作成する際にも、当然文章力が求められます。
加えて、チームメンバーと連携して作業を進めたり、顧客のニーズをヒアリングしたりする上ではコミュニケーションスキルが重視されます。
人それぞれに個性があるため一概には言えませんが、このようなコミュニケーションスキルを要する作業は、どちらかといえば文系タイプが得意とするところではないでしょうか。
文系出身者におすすめのITエンジニアへの道!
では、文系出身者におすすめのITエンジニア職には、どのようなものがあるのでしょう?
本記事では、2つピックアップしてご紹介します。
①業務系システムのシステムエンジニア
あくまでも一つの目安ではありますが、文系出身、かつIT業界未経験でITエンジニア職を目指すのであれば、一番の狙い目は、業務系システムの開発を手掛ける企業のシステムエンジニアです。
業務系システムには、生産管理や販売管理、在庫管理や財務・人事系の管理システムなど、企業の業務をつかさどるシステムが含まれます。
業務系システムの開発では理数系の知識が求められることが少なく、かつ、昨今は慢性的な人材不足が続いており、未経験者にも比較的広く門戸が開かれています。
ちなみに「システムエンジニア」というのは日本特有の職名で、一般的には設計、プログラミング、テストまでを臨機応変に手掛ける職種を指します。
この職種に就くと、まずはテストや簡単なプログラミングなどからはじめて、OJTで徐々に仕事の幅を広げていくことになります。
リーダーシップのとれる人であれば、最終的にはPM(プロジェクトマネージャー)やPL(プロジェクトリーダー)を目指すこともできるでしょう。
②Webサイト・スマホアプリ開発エンジニア
WebサイトやECサイトの開発、スマホアプリの開発を手掛けるエンジニアもおすすめの職種です。
デザインに興味がある人なら、まずはWeb制作会社にデザイナー見習いとして入社し、プログラマーへの転身を狙うというルートもあるでしょう。
ITに関する知識不足が不安であれば、システム開発プロジェクトの推進を支援するPMO(プロジェクトマネジメントオフィス)、PSO(プロジェクトサポートオフィス)の、アシスタント職から入るのもよいかもしれません。
これらの職種では高いコミュニケーションスキルが求められるのに加え、かつメールを用いたメッセージ通達、作業者向けのマニュアル作成といった文書の作成に携わることが少なくありません。
コミュニケーション力・文章力に自信があれば、IT知識不足に臆することなく挑戦してみる価値はあります。
文系出身者に向かないITエンジニア職は?
逆に、文系出身者にはあまりおすすめできないのが、数学的な知識や複雑な計算処理などが求められる分野です。
先に例として挙げたシミュレーションシステムの開発などは、その代表例と言えるかもしれません。
最近トレンドのAI関連システムの開発も、統計やデータ分析の知識が求められるため、数式にアレルギー反応を起こすタイプの人にはあまり向かないジャンルです。
もちろん、「AI関連システム」とひとくちに言っても様々なものがあり、必ずしも文系には適さないと言い切ることはできません。
しかし、Deep Learningなどの技術を用いた高度なシステム開発を手掛ける場合は、理数系の素養が求められるケースが多いようです。
入社してから「こんなはずではなかった」と嘆くことにならないよう、応募前に十分に求人情報を吟味し、可能なら実際に仕事の現場を見学させてもらうなどして、その仕事に求められる適性を確認しておきたいところです。
なお、言うまでもないことですが、出身は文系でもそうしたジャンルに強い関心があり、自己学習で知識を身につけていくことは十分可能です。
本記事でお伝えしたのは「典型的な文系タイプ」を前提とした一般論ですから、あくまでも参考程度に留めていただき、最終的にはご自身の判断で進むべき道を見極めていただければと思います。
「文系だから」と希望の職種を諦めないで
以上、この記事ではITエンジニアに関心を持つ文系出身者の方に向けて、文系出身者にこそITエンジニアが向いている理由、および文系出身者が目指すべきITエンジニア職をご紹介しました。
いかがでしょう?一見、「バリバリの理系向け」に感じられるITエンジニアですが、実は文系出身の方にも活躍の場が拓かれています。
ITエンジニア職に関心をお持ちお方は、「文系だから…」としり込みすることなく、ぜひ積極的に転職にチャレンジしてみてくださいね。
なお、未経験で転職を志す場合は、入社後の研修が充実している企業を選ぶのがポイントです。
また、ITスキルに不安がある場合は、事前にITスクールに通うなどして関連スキルを身につけておくと、転職活動をさらにスムーズに進めることができ、おすすめです。
みなさんの転職活動の成功をお祈りしています!
<参考・参照サイト>
[1] 「【IT業界】数字から見る「人気No.1業界」志望者のすべて」(Reccoo Marketing Blog(株式会社リクー)、2020年9月2日参照)